日本に在留ベトナム人総数の推移について

令和3年度

拓殖大学国際学部

卒業論文

論文話題   日本に在留ベトナム人総数の推移について    

学生番号:G007072020

指名:DINH CAO THANG

指導教員名:竹下正哲

目次

第1章    :はじめに.. 3

第2章:研究の目的.. 6

第3章:研究方法.. 7

第1節:優秀なベトナム人実習生や留学生へのインタビュー.. 7

第2節:日本に在留ベトナム人の事情をもっと知りたいためのアンケート.. 12

第4章:インタビューやアンケートの結果.. 12

第1節:インタビューの結果.. 12

第2節:インタビュー結果のまとめ.. 14

第3節:アンケート結果.. 14

第5章:考慮.. 23

第6章:引用文献.. 23

日本の在留ベトナム人数は急増について

国際学部国際学科4年    DINH CAO THANG

第1章:はじめに

日本におけるベトナム人の留学生や労働者は急激している。厚生労働省の発表している「外国人雇用状況(令和元年10月末現在)」によれば、日本国内にいるベトナム人は40万人を超え、過去5年間でもっとも急激に増えている外国人だ。(外国人採用ナビ、2020年6月)。以下に2012年から2020年まで日本に在留するベトナム人総数の変化を示している(出入国在留管理庁による)

図1:2012年から2020年までベトナム人総数の変化

では、なぜベトナム人の若者は日本に来るのか、いくつか理由がある。

  • ベトナム人は親日感情が高い。(外国人採用ナビ2020年6月)
  • ベトナムに対する日本のODAや投資の影響。2013年にJICAが発表した「対越ODA再開20週年記念」のパンフレットによると、1992年〜2011年度に日本は累計で2兆円のODAを行っており、最大の援助国だった。ODAや投資をきっかけに、日本企業のベトナムでの活動も活発化し、ベトナムでの人材採用増や日本語人材へのニーズが高まるという循環が生まれている。(外国人採用ナビ2020年6月)
  • 日本は欧米より留学も就労もしやすい
  • 日本の大学や大学院はアジア人学生を積極的に誘致しているので、留学しやすさから日本を選ぶベトナム人の若者も多いようだ。これに対して、欧米への留学はまだまだ学費や審査の面や留学生のアルバイトが禁止するから厳しいと言われる。(外国人採用ナビ2020年6月)。以下に2012年から2020年まで日本に在留するベトナム人留学生数の変化を示している(出入国在留管理庁による)

図2:2012年から2020年までベトナム人留学生数の変化

  • また、以前は技能実習生の大半は中国人だったが、中国の急速な経済発展によって日本へ稼ぎに来る中国人技能実習生の人数が近年減少している。その欠員を埋めるために多くの日本企業はベトナム人技能実習生を受け入れるようになった。(外国人採用サポネット2021年10月)。以下に2011年から2017年まで日本で働く外国人の技能実習生の推移を示している(図表:EJIMA DESIGN)

図3:日本で働く実習生の年次推移(上位4カ国)

日本のベトナム人不法残留問題

日本の法務省出入国在留管理庁が発表した2021年7月1日時点における不法残留者数に関する統計によると、同時点の日本におけるベトナム人不法残留者数は9648人で、2021年1月1日時点の1万5689人と比べて38.5%減少した。以下はベトナム人不法残留者数の在留資格別を示している。(VIETJO 2021年11月)

図4:ベトナム不法残留者数の在留資格別(2021年7月1日)

図4を見ると不法残留資格は最も多いうのは技能実習生だ。

技能実習生は日本に来るために借金をして、日本で働きながらその借金を払う。

留学生もそうだ。本当の留学したい人や国費留学生を除く、ほとんどのベトナム人留学生はアルバイト収入を依存して、生活費や学費は自分で支える状態になる。

そして、話題になった問題は途中でビザが更新できなくなる場合、不法残留のことであった。

第2章:研究の目的

今後日本に在留ベトナム人総数の推移を見込む。

「日本は世界の中でも厳しい社会だ」と日本に来る前にベトナム人の誰もが耳にするが、日本に来てから誰も若干カルチャーショックを受ける。

また、技能実習生が日本に来るためには仕事の内容にもよるが6000USD(米ドル)―6500USD(米ドル)かかる。(VIETNGOCサービス・貿易株式会社2020)

私費留学生の場合は100万円かかる(nhatanh-edu2021)

そのため、経済状況が困難な人はお金を借りなければならない。

技能実習生とは日本の労働力不足を解消するため、外国人が働くことができるように設けた資格のことだ。また日本は英語圏の国に比べ外国人の労働者や留学生の受け入れが容易な制度を設定している。例えば、オーストラリアで留学生のアルバイトは2週間で40時間しか働けない。アメリカは週20時間だが、学内でしか働けない。ところが、日本は資格外活動を申請すれば、留学生は週28時間、休暇中は40時間アルバイトをすることができる。

また、一時間当たりの賃金がベトナムより高いので、収入目的で日本に来ることがブームになっている。

しかし、いくつもの困難にもかかわらず、来日して働きながら日本の知識を学び、将来を見据えて目の前の問題を一つずつ乗り越えるという努力家もたくさんいる。

そのような実習生や留学生は困難を越えるため、どのように考えるのか、また今後、日本とベトナムのどちらで活躍したいのかということを調査したい。

本研究では普通の人と違う道を進んだ立派な実習生や留学生に、来日してから今までの成果のストーリーを聞く。また、今後どんな道を選ぶのか、ということも明らかにしたい。

第3章:研究方法

第1節:優秀なベトナム人実習生や留学生へのインタビュー

  1. インタビュー対象者

私は2016年3月に日本に来て、最初は日本語学校の寮に入った。そこに三笠塾(ベトナム人のための外国人サポートセンター)があり、日本語学校の授業以外に、あそこでも日本語を勉強した。私は参加した時、収入目的ではなく、本当に学ぶために留学をしている先輩がした。実習生として毎日朝早くから夜遅くまで仕事をしているにもかかわらず、しっかり日本語を勉強して、日本語能力試験N1を取得する人もいる。今回紹介するのは三笠塾で出会った実習生のTrinh Duy Thaiさんと元留学生のPhan Van Hauさんである。インタビューも実施することにした。

写1:三笠塾メンバーの結婚式   
写2:三笠塾の食事時間  

          

写3:三笠塾の遠足
写4:三笠塾メンバーの誕生日

                

  • 日本来てから今までのプロセス紹介

Trinh Duy Thaiさん(特定技能ビザ)

Thaiさんは1992年7月14日にベトナムの中部Thanh Hoaで生まれた。2017年10月に実習生として来日。最初は自分の日本語が通じなく、仕事も未経験なので、大変な日々だった。

しかし、日本に住んでいると、やはり外に一歩出たら日本語ばかり、「自分の日本語レベルがこのままだとまずいなぁ」と思い、会社のベトナム人の先輩から三笠塾を紹介してもらった。2017年12月に三笠塾に参加。毎日朝から晩までの仕事が終わってから、急いでシャワーをすませ、翌日の弁当の準備のために料理を作ったりして、22時から23時までだいたい一時間で日本語を勉強した。少しずつ日本語が話せるようになり、日本人の同僚とコミュニケーションも取れて楽しい日々送れた。

2019年12月に日本語能力試験N2を取得した。

写5:TRINH DUY THAI 写真

写6:Thaiさんはディスカッションに参加

写7:Thaiさんは料理を手伝う

Phan Van Hauさん(就労ビザ)Hauさんは1993年10月1日にベトナムの首都Ha Noiで生まれました。ベトナムの建築大学を卒業して、2017年1月に日本大学院で修士を習得するために来日。最初は他のベトナム人留学生と同じようにたくさんアルバイトをしながら学校に通った。そして、1ヶ月後、疲れて限界を感じ、もう一度日本に来た目的を思い出し、行動を変えた。夜勤のアルバイトを辞めて、日本語学校や三笠塾で真面目に日本語を勉強した。三笠塾の先生の紹介のおかげで、2017年6月に建築会社でアルバイトができた。

三笠塾の先生や建築会社の社長とよく相談したことがきっかけで、目的を変えた。日本の大学で勉強するより働いた方が良いと考え、2018年4月に日本語学校を卒業後、そのままアルバイトしていた会社に正社員として入社した。

2018年4月に日本語能力試験N2を取得した。

2020年10月に将来ベトナム進出を計画している会社に転勤。


写8:Hauさんの写真

写9:Hauさんはスピーチコンテストを参加
  • インタビュー内容

2016年以前日本に在留ベトナム人総数はまだ少なかった。(およそ15万人)。そのため、日本に来たばかりのベトナム人は先輩がいなくて、とても大変だった。多くの困難を乗り越えられない者は日本に来た目的をあきらめて、帰国するか、日本で不法残留になる。

今回インタビューの目的は優秀な人々がどうやって乗り越えたか。そして将来の予定を知ることである。

以上のことから、以下の3つの質問をした。

  1. もともと日本に行きたかった理由はなんですか?
  2. 日本に来てたくさん大変なことがありますが、どうやって乗り越えましたか?また、なぜ普通の人と違って、実習生ビザ(Hauさんの場合は留学ビザ)から特定技能ビザ(就労ビザ)を切り替えましたか?
  3. 将来の予定は何ですか?

第2節:日本に在留ベトナム人の事情をもっと知りたいためのアンケート

  • 実施日:2021年11月22日〜2021年11月25日
  • 実施場所:FaceBook、三笠塾グループ
  • 実施者数:52人
  • 内容:日本に在留ベトナム人の事情

第4章:インタビューやアンケートの結果

第1節:インタビューの結果

  • Trinh Duy Thaiさん
  • もともと日本に行きたかった理由は何ですか?

日本に来る前にベトナムで消防士として活躍した。しかしその仕事の給料は自分も親も支えられないので、もっと給料が高い仕事を探していた。友達にそのことを話すと、「最近ベトナム人は日本に行くことが多いから、調べてみたら?」とアドバイスをしてくれた。調べたら、日本で働くと、ベトナムの3〜4倍くらい給料がもらえると知り、日本で働いてお金を稼ぐことにした。

  • 日本に来てたくさん大変なことがあるじゃないですか?どうやって乗り越えますか?また、なぜ普通のルートと違う技能実習生ビザから特定技能ビザを切り替えましたか?

確かに日本に来たばかり時日本語が通じなくて仕事も未経験なのでとても辛かったが、日本にいるかぎり、日本語ができないと何もできないので、このままの状態だとまずいな、何かしないといけないと思った。その後、会社のベトナムの先輩から三笠塾という日本語塾を紹介してもらって通うことにした。三笠塾で勉強して少しずつ日本語が話せるようになり、日本人の同僚とコミュニケーション取れ、楽しい日々となった。2年間日本語の勉強を続け、やっとN2を取れてよかった。

特定技能ビザに切り替えた理由は実習生制度では実習生と会社の間に組合があり、その組合は会社寄りで、自分の困ったことを相談しても聞いてくれない。それで特定技能ビザに切り替えたいと思った。ビザの変更の仕方や特定技能試験の申し込み方法を全く知らなかったので、三笠塾の先生と相談しながら調べた。特定技能試験は大変だったが、諦めずにやり、ついにビザを切り替えることができた。

  • 将来の予定は何ですか?

将来ベトナムに帰って習得した日本語や蓄えた経験、知識を生かして、ベトナムにある日本の企業で働きたい。

  • Phan Van Hauさん
  • もともと日本に行きたかった理由は何ですか?

日本の設計スタイルが好きで、日本の大学院で建築を学びたいと思った。

  • 日本に来てたくさん大変なことがあるじゃないですか?どうやって乗り越えますか?また、なぜ元の目的通りに大学院に入らなくて、就職しましたか?

最初、日本に来た時、ほかの先輩と同じように自分はもう大人だから家族のお金に頼らないと決め、たくさんアルバイトをした。夜勤の仕事もやった、学校は午後に始まるから、夜勤の仕事が終わって、4時間ぐらい寝て、また学校に行くという毎日を繰り返した、7日目で、限界を感じた。うっかり寝坊して学校を休んだ。朝6時ぐらいに寝て目覚めたのは午後6時、12時間寝ていた。起きた時、突然日本に来た本当の目的を思い出し、他の戦略を変えた。三笠塾の先生と相談して、とりあえず日本語の勉強に集中するようにアドバイスをされ、建築会社でのアルバイトを紹介してもらった。

大学院から就職に目的を変えた理由は建築のアルバイトをした時に、大学院で勉強したい建築の知識を仕事からほぼ学ぶことができたからだ。会社の社長と三笠塾の先生に相談すると、やはり勉強するより就職をしたほうが良いと言うので、働くことにした。

  • 将来の予定は何ですか?

将来、ベトナムに帰って、日本の会社で働きたいと思う。今働いている建築会社は将来にベトナムで事務所を立ち上げる予定があるので、もしかすると会社と一緒に開拓するかもしれない。

第2節:インタビュー結果のまとめ

インタビュー結果で見ると、日本に来て二人とも大変なことがたくさんあったことがわかる。二人にとって良かったことは相談できる日本人がいたことだ。そこから色々な解決方法が生み出せたのだと思う。しかしながら、ほとんどベトナム留学生や実習生には相談する人がいない。そうなると自分で判断して行動しないといけない。Hauさんは三笠塾に入らなければまだ夜勤の仕事を続けていたかもしれない。外国人サポートセンターがあることが、いかに大切なことかわかった。

また、日本に来る前と日本に来た後の考えは全く違う。日本が好きだから日本に来たが、日本での生活がもし大変になれば、また帰国したくなるかもしれない。

HauさんとThaiさんは二人とも最初の目的よりもっと良い目的に変更することができた。

最後に二人とも将来にベトナムに帰って、日本の会社で働きたいと思っていることがわかった。

第3節:アンケートの結果

表1:日本に在留ベトナム人の事情についてアンケートの集計

   質問答え
1性別は?男 女
2あなたのベトナムの出身はどこですか?北部 中部 南部
3あなたは何歳ですか?18〜21 22〜25 26〜30 31〜34 34以上
4日本に来てから何年になりましたか?1〜3 4〜6 7〜9 10〜13 13以上
5もともとどんな資格日本に来ましたか?留学生 技能実習生 就労 家族 特定技能 その他
6現在、あなたのビザの種類は何ですか留学生 技能実習生 就労 家族 特定技能 その他
7あなたは結婚していますか?独身 結婚 結婚、子供あり
8日本に来るために、お金を借りましたか?はい いいえ
9その金額はどのくらいですか?なし 20万円以下 20万円〜40万円 40万円〜60万円 60万円〜80万円 80万円〜100万円 100万円〜120万円 120万円〜150万円 150万円以上
10その借金を払い終わりましたか?はい いいえ その他
11毎月、どのくらい家族にお金を送りますか?1万円〜3万円 4万円〜6万円 7万円〜10万円 11万円〜13万円 14万円〜16万円 16万円以上 送らない
12将来、ベトナムと日本どちらに住みたいですか?日本 ベトナム
13日本に住みたい理由は何ですか? 
14ベトナムに住みたい理由は何ですか? 
15日本の生活はどうですか?非常に満足 やや満足 満足 やや不満 非常に不満
16今、仕事は楽しいですか?(留学生の場合はアルバイト先)とても楽しい やや楽しい 楽しい 辛い とても辛い
17職場や現場、アルバイト先で周りの日本人との関係はどうですか?仲が良い 普通 仲が悪い
18途中で学校や会社を辞めたいと思ったことがありますか?ある ない
19ある場合理由は何ですか? 
20コロナで仕事や生活に影響はありましたか?影響あり 影響なし どちらとも言えない
21日本での生活に困った時、相談できる日本人はいますか?いる いない 相談しない、自分で処理する ベトナムの家族と相談する その他
22もし、今後ビザ更新ができない場合。そうしても日本にいたいですか?どうしてもいたい いたい どちらともいえない いたくない 帰ってもいい 帰ってまた戻りたい
23もし、もう一度選べるなら、日本に行きたいですか?行きたい 行きたくない 他の国に行く その他

第5章:考慮

日本に在留するベトナム人総数は図1を示したように2015年から急増した。それから今日までわずか6年間しか経っていないので、ベトナム人に向けたサービスやお店などはまだ充分ではない。そのため、ThaiさんとHauさんのように日本に来たばかりのベトナム人はとても大変である。

しかし、アンケートの結果を見ると日本に来てからの年数は4〜6年との回答が最も多い。また日本に来た時の資格は留学ビザが最も多いのに対し、現在のビザは就労ビザであるとの回答が最も多い。このことから、2015年に日本に来た時に比べ現在のベトナム人の経済状況はそれほど困難ではないと考えられる。

ベトナム人の経済力が強くなれば、ベトナム人向けのサービスやお店なども増えることが見込まれる。

また、最初に間違い選択をしてしまっても、もし日本事情にくわしい先輩や外国人サポートセンターがあれば、もう一度より良い道が選べることもわかった。ThaiさんとHauさんは三笠塾の先生のおかげで、困難を乗り越えられた。インタビューを通して外国で暮らす誰にでも大変な時期があり、困った時に外国人が相談できる機関があることが最も重要だ。

米中貿易摩擦による貿易面への影響で近年ベトナムの経済が活発になっている。中国からベトナムに移動する日系企業も増えており、日本にいるベトナム人が将来にベトナムに帰国して、日本企業で働く傾向にある。

日本は人手不足の問題がますます深刻になっている。しかし、アンケートの結果では、将来日本にいる(36.5%)よりベトナムに帰りたい(63.5%)と答える人が圧倒的に多い。日本政府は外国人にとっても住み良い環境を作らないといけないだろう。

第6章:引用文献

  1. https://gaikokujinsaiyonavi.com/vietnamese-young-generation/

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