この信じられないくらい美しい紫色の実はあけびである。亡くなった父が大好きで、今頃の時期、八百屋の店先で見つけると買い求めたものだった。でも実は、このあけびの実を父が食べているところを見たことがない。母も私も調理方法を知らず、買えばそのまま父に手渡しするだけだった。
父は多分、食べるためにあけびの実を欲したのではなかった。この本当に美しい紫色の実に魅せられていて、田舎育ちの父にとって、故郷を思い出すよすがだったのでは?とそんなことを想う。
今はもう父はこの世にいないので、今回はしっかり食べてみようと、店で調理方法を聞いた。いろいろありますよ、というわりには、この美しい紫色を生かした食べ方は教えてもらえなかった。いわく、”皮をむいて、炒める、蒸す、サラダにする。”
自宅の猫は、綺麗ねえと花をほめると、次の瞬間、ばりばりと食べる。花をきれいねえ、と言って、食べずに眺める、そういう感覚が、このあけびの実と付き合う際には大切なのかしら、、、、、、。