三笠塾では新年の初詣を恒例化するようになった。昨年は都電荒川線に乗って穴八幡と鬼子母神にお参りし、都電荒川線の終点三ノ輪までいってみた。途中、江戸時代の花見の名所、飛鳥山にも寄った。ベトナム人はルナカレンダーなので、日本のお正月とは縁が無い。むしろ日本人が休む間、学生にとってはまたとないアルバイトのチャンスとなっている。彼らには高い航空券を買ってベトナムに帰国する必要は何もないのだ。
この三笠塾の初詣は参加者が案外多い。一昨年までは浅草寺にお参りするのが恒例だったが、昨今の外人観光客の増加で、外人が増えたねー(自分たちも外国人の集団だということを忘れて)、と浅草寺は避けるようになった。
令和の最初の年が明けた1月3日の朝、今年はぐっと趣を変えて京王線で西方向に向かった。明大前集合→高幡不動→多摩動物公園。さらに午前中に見て回れるようにと、集合は朝8時。とても寒かった。でもお天気は最高。初めて行く高幡不動、楽しみだ。
ニャン先生の結婚式に参加した行事先生は前日に帰国。しっかり初詣にも参加してくれた。クオン先生、そして三笠塾のレジェンド、ロンさんが埼玉県からわざわざ訪ねてきた。ロンさん今日は奥さんとは別行動。4年経った三笠塾には既婚者が増えた。現在のカップルはハオさんとタオさん、高山さんとズエンさん。クオン先生はチヤウさんがいなくて寂しいね。相変わらず、みんなの関心事は写真撮影。ある意味では高幡不動尊の古くからの伽藍のたたずまいと、スマホを持つ若者たちの行動に見る新旧混ざった面白い空間だった。寒い寒いと言いながら靴を脱いでお寺の中も見学した。
屋台も出ていて柿、干し柿、タコ焼きなどなど(みんなお腹空いてるんだね)を買い食いして、香炉の煙で「顔がよくなりますように」と煙を顔面になすりつける仕草。前のおじさんが笑っていたよ。今年もみんなにとっていいことたくさんありますように。
8時出発で早めに境内に入ったのはとても良い判断だった。これはクオン先生の提案。朝早く起きるのが苦手な彼が、初詣は遅くなると混みます! と断固決定してくれた。境内から出るころにはぞろぞろ参詣客が入ってきて、身動きもままならないほど混み合っていた。
すっかりお腹をすかして高幡不動駅に戻ってきた。そこから多摩動物公園はすぐ近くと言われ行ってみると、本当に近かった。動物公園行きの支線があって次の駅。上空には多摩モノレールがある。それに乗ったら周囲がよく見えて気持ちよさそうだ。
多摩動物公園は1958年5月5日の開園した動物園で、私が子供のころからある。上野動物園と違い自然に近い状態で動物の展示をする。それが売りだったように思う。実際、園内は広大で、たくさん歩かされた。歩道と展示動物との間には深い溝があって、檻はない。そこで2時間ほどの自由行動にして各自好きな動物を見に行った。私も月並みにライオンや象、キリン、豹、などを見にいった。お天気がよく風がない。そこそこの人出だが混雑感は全くない。2時間はあっという間にすぎた。
今回の初詣、参加人員は思ったより多くて15人。さすがに15人一緒に食事となると、多摩動物園では無理だ。来るとき気になっていたモノレールで高幡不動まで引き返し、そこで昼食をとることにする。せっかくだからみんなで温かいものを食べたい、ラーメンでもいい。ところがこういうときに限ってラーメン屋がない。見つけたのは“いきなりステーキ”だった。参加者には反対するものはいない。彼らは肉が大好きなのだ。ステーキハウスで肉をほおばり、暖かくなってお腹もいっぱい。ここで解散した。
恒例行事となった春秋のツアーにしろ、海水浴にしろ、生徒たちをどこかに連れていくことで、彼らの世界が広がり、恋人や家族とも行かれるようになればと願っている。どこへ行きたい? と聞いても、彼らからは決まって返事は返ってこない。派手な都心の繁華街へは行くことはあるだろうが、日本人に知り合いでもいない限り、近くのスポットでも自ら進んで出かけて行くことは難しいだろう。彼らの日常は職場と住みかを行き来するだけなのだ。彼らはどこへ連れて行っても、ここには初めて来ましたというのが常だ。
毎回同じ場所でもいいだろう。三笠塾に集う若者がいる限り、日帰りツアーや折々の見学スポット探訪というイベントは続けたいと思う。