鯉のぼりと大奥

テレビとは無縁の人生をおくっていた陽子先生が、テレビ鑑賞に目覚めたのはコロナ禍の外出禁止のせいだった。

なにか一つことに集中する度合いが強いので、ながら族になれない。学生時代はながら族というのは立派な人たちとイコールだった。一度にいろいろなことができる人。そういう器用な人が案外もてはやされていたように思う。そういう中で、陽子先生はもっとも愚鈍、鈍重、ばかみたいな生徒だった。なにしろひとつことしか集中しないから、なんでも恐ろしく時間がかかる。どうでもいいけれどテレビを見ることにも集中してしまうので、他の事ができなくなる。結果、テレビ鑑賞ははなから諦めていた。ずっと、ずっと、ずっと。

映画は本当によく見に行った。1日3本とか4本とか、休日にまとめて見に行く。ばかみたいといわれたが、とても楽しかった。真っ暗な映画館の中で画面に集中する。

コロナ禍で、家に閉じ込められて、3食、家族の食事のしたくばかりしていたら3日もすると(集中するということも含めて)うんざりしてくる。そうだ、この機会にテレビを見よう。そして時間制限なしのテレビ鑑賞会が始まった。テレビは面白い。とても面白い。これもテレビに集中できる環境のおかげ。かくして、NHKの大河ドラマを中心にUNEXTを駆使してテレビ鑑賞に励んだ。誤解のないように、コロナ禍外出禁止だからできたことは他にもある。例えば年賀状のやり取りだけの人に再度返事を書く。そうするとびっくりして返事がくる。来ない人は余程の筆不精。ぬか床を作って冷蔵庫でぬかみそ漬けを作り。

NHKのドラマはビックリするようなものがたくさんあった。その一つが大奥。ベトナム人の生徒の中にはOLマンガを好む子もいて、彼女らから教えてもらうことも多いがさすがに大奥はむりだったようだ。彼女らに大奥の話は???。この超のつく面白いドラマもご多分に漏れず原作はコミックだった。

あー、原作読みたい。

コロナが終息してきた現在。陽子先生は元の忙しい生活に戻り、足を引きずりながら外出する。とてものんびりドラマに浸っている暇はなくなってしまった。

ふと空を見上げると鯉のぼりが、、、、、、甍の波も今は昔、鯉のぼりが空を泳いでいた時代を知る人は?

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です