ハノイにて(その2)

土曜日の夜、アミューズメントパークは子供たちで賑わっていた

ハノイからハイズーンまで直線距離で約50km、本来なら車で2時間ほどの所にある。でもハイズーンからハノイへ向かうには何時間かかるかはわからない。インフラが未整備で急激に車社会へ移行したため、市街地へ入ると必ず渋滞に巻き込まれることになる。

ベトナムはハノイだけでなくどこも信号が少ない。ほとんどないといっていい。かつての宗主国フランスの影響が強く、交差点はロータリー式で、日本のように横断歩道を設ける習慣もない。歩行者は車道を横切るときは、独特の渡り方をする。慣れない私はベトナム人と一緒でないと、いつまでたっても向こう側に行けないし、道の真ん中で立ち往生してしまう。独特の渡り方というのは、走ってくるバイクや車に対して平行に動くような形でだんだん移動していく。そうすると気がつくと向こう側にいる。バイクの方がよけてくれるのだ。したがって、立ち止まってはいけない。

そんな道路事情なので、午前9時にハノイを出発してハイズーンに着くのは11時ころ、2時間ハイズーンに滞在して14時にはハイズーンを出発しないと夕方の約束に間に合わない。滞在があわただしくなることは否めないが仕方がない。滞在時間が少ないので、なるべくたくさんのことをしておきたいと思ってしまう。

バイクで見送ってくれたタムのお父さん

タムさんのお父さんの見送りから、「帰りは2時間で大丈夫ですよ」とドライバーに言われて安心していたら、ハノイ市内で車が動かなくなった。結局40分ほど遅れて、夕方会う約束をしていた学校の関係者とホテルのロビーで会った。今度は彼らの車で学校まで移動。1時間ほどお互いの情報交換をして、夜は三笠塾講師のお父さんの誕生日パーティーに参加させていただいた。

ホアンキエム湖よりずっと西寄り、空港に近い所にタイ湖(西湖)という湖がある。現在の上皇様ご夫妻がかつて宿泊された場所で、ホアンキエム湖と同様風光明媚で、こちらも市民の憩いの場所となっている。湖のほとりにアミューズメントパークができて、そこのレストランがこの夜の会場だった。私が初めてハノイに来たのは3年前、当時はこういう娯楽施設はなかったと思う。それにこういう施設で、家族団らんで食事するというような光景も見られなかった。この3年でハノイは格段に豊かになったと思う。と同時に値段も高くなった。タクシー代は日本に比べて安いとはいえ3倍に跳ね上がった。公共交通機関が発達していないため家族連れの移動にはタクシーが必要不可欠で、そういうお金を払えるほど豊になったということだ。

タイ湖にできたアミューズメントパークのレストラン

料理はビュッフェスタイルだった。生ガキをはじめとする海産物、肉類を焼いたもの、麺類、鍋もの、果物、お菓子。ベトナムは生ものは食べないので、屋台で店員が焼いたり、煮たり、ゆでたりしてくれるものを皿に取って、たれをつけて食べる。やはりここはベトナム、日本とは何か違う。店内を見渡すと、子供の数がすごく多いこと、若いカップルが多いこと、そして大家族で食事を楽しんでいる姿が目に付いた。それらは日本ではあまり見られなくなった光景だ。おじいちゃんの誕生日祝いに出されたケーキのろうそくの火を、おじいちゃんの代わりに孫が吹き消す。そんな幸せそうな家族の姿を目の当たりにして、思わずほほえんでいた。おじいちゃんと言っても50歳前半という若さだ。

宴会が終わって外にでると子供たちが走り回っていて、ここも賑やか。そういえば今日は土曜日。みんな楽しそうにうれしそうにしている。15人ほどの家族パーティーだったが、日本人は私だけ。それでも不思議なほどベトナムでは異国にいるという不安を感じない。私はこういうベトナムの雰囲気が気に入っている。

土曜日の夜、アミューズメントパークは子供たちで賑わっていた

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