日本に来て8年以上になるけれど、ずっと東京の周りで過ごしていて、遠くへ足を延ばすことがあまりなかった私にとって、今回の滋賀県出張は特別な時間になった。琵琶湖の風景が目の前に広がった瞬間、胸の奥がほんのり温かくなった。
出張は慌ただしくて、ゆっくり散策する時間もなかったけれど、それでもあの日の空気や光、静けさは今でも心の中でやさしく残っている。
東京での毎日は満員電車、人の流れ、急ぎ足の自分。会社ではずっとパソコンの前で、気が付けば外は暗くなっていて、空を見上げることも、深呼吸をすることも、いつの間にか忘れてしまっていた。
その日、調度、金木犀の花が咲いていて、風に乗ってほんのり香る甘いにおいが胸をふわっと温めてくれた。「ああ、こんなに優しい匂い、いつから感じていなかったんだろう」そう思ったら、なんだか嬉しくて少し切なくなった。
もし、いつかベトナムに変えることになっても、日本の色々なことを思い出す時、その中に金木犀の花の香りもきっと忘れないで残っていると思う。
長い間大切に育ててくれた人たちのおかげで、今日の私がこの香りに癒されている。そう思うと胸がじんわりして、ありがたい気持ちでいっぱいになった。これからもこの木がずっと守られて、次の世代にも同じ香りが届きますように。
夜には、陽子先生がくれた総合診療の記事を読んだ。人の心に寄り添う医療の大切さを、私も思い、深く共感した。
薬や注射などだけではなく、心を込めたケアもとても大事だと考えている。時間はかかるかもしれないけれど、関心を持って動く人がいれば、きっと未来には実現できて、もっと良くなると思う。
2025年11月16日 シマエナガ記者 記事

