柿の実

我が家に柿の木がある。毎年、たわわに実をつけて、私たちを喜ばせてくれたが、2-3年前からちょっと様子が怪しくなってきた。狂ったようにたくさん実をつける年もあれば全く実がつかない年もある。大きな実がなる年もあれば、小粒な実だけのこともある。柿の木を含む我が家の庭は義母のテリトリーなので、私は一切手出しをしないが、それでも四季折々の義母が端正込めた花が咲き、実がなる。柿の木もそのうちのひとつだ。

私は、昔よくいわれた”緑の指”を持つ女ではない。”緑の指”というのは、草木を見事に育て上げる人のこと。とても楽しそうに草や木を育てる。つい先ごろまで私のピアノ教室に通っていたSさんは、そういう人だ。先生の家のお庭にクリスマスローズを植えてあげますよ。とはりきって遠くからスコップや土を持ってやってくる。ピアノの練習よりよほど楽しい。とピアノの先生である私に対してずいぶんと失礼なことを言う人だが、彼女の”緑の指”は見事だった。そして、我が家のクリスマスローズはどんどんどんどん増えて、夏でも冬でも白い硬い花を咲かせる。

Sさんのお宅にも柿の木があって、見事な柿が実るのだそうだ。でもそれは渋柿なので、焼酎をつけて甘みをだす。亡くなった私の母は柿が大好きで、そんな母のために父はよく柿の実の渋抜きをしていた。立派な柿ほど渋いんだ、といいながら。そんなSさんの柿。柿好きの母のためにとSさんも私の父同様に、大切に育てて渋抜きをしたものをもってきてくれた。母はとても喜んでその立派な柿の実を食べていた。

我が家の柿は、Sさんに言わせると甘柿なんだそうだ。渋抜きの必要はないですという。たくさん実った年にベトナム人たちが、欲しいほしいというので、三笠塾に持って行った。

その時のことは今でも思い出すだけで笑えてくる。柿は半分甘く、半分渋い。それも一つの柿が半々の実もあれば、渋柿あり、甘柿あり。ベトナム人講師のニャン先生は器用に柿の皮をむいては、ペロと舐める。これは甘い。大丈夫。うーん、これは渋い。だめ。半々なのは、うーん、考えてやっぱりやめよう。周囲に生徒が集まって、ちょっとずつかじる。あー甘い。おいしい。いつもは猫みたいな彼らがこの日は子熊か子ザルみたいに見えてきた。

そんな柿の木。益々マイペースになって、今年は10個くらい実をつけた。大きな実だ。そろそろ食べごろ。でも数が少ないのでなかなか収穫することができない。そんな折り。友人が柿の実を送ってくれた。さすがに市場に出回るような柿。大きくてとても立派だ。こうやって、よその柿をほめて、食べていると多分、我が家の柿は僻んで不味くなるかもしれない。

それにしてもマイペース。♪♪♪

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