昨夜のことだった。1月21日の23時半、いつもならみんな寝ているときである。行事先生から三笠塾ラインにお知らせが入った。
もうすぐ、JLPTの発表ですよ!
片時も忘れたことはない、まるで恋人を思うような心境のJLPTの合格発表。いよいよ発表の時が来た。二人のタイさん、お魚の鯛さんと太陽さんのことはずーっと気になっていた。あとは私の7人のJLPT-N1受験者。けれど、2月から始める新しい講座のことやほかの仕事や今日きた古い友人からのメールのこと、始めたばかりのコーラス教室、2月初めのピアノのコンサート、とほかのことやっていたら、夜遅くなって寒くなって寝てしまった。翌朝ラインを確認すると、ニャン先生から4人のN2合格を知らされた。二人のタイさん、ルアンさん、サンさん。行事先生も大喜び。彼は二人のタイさんの面倒をとてもよく見ていたから、感激もひとしおだろう。しかも、これによって彼らの立場は飛躍的によくなるはずだ。
実習生の就労環境を考える上で、企業側のJLPTへの取り組みには微妙な変化がある。当初、実習生受入先の組合や受入企業はJLPTにものすごく積極的だった。組合でまとめて試験の申込もしてくれたし、合格者には豪華なご褒美もあった。三笠塾で勉強してJLPTに合格する、というのは実習生のステータスだったのだ。ある企業にJLPTへの三笠塾のかかわりを説明すると、自分たちは社内で勉強会まで手が回らない、でも日本語がわからない実習生は困るのでとても助かりますと言ってくれた。三笠塾には一目おいてくれていたのだ。ところが、ある時期から変化が生じる。受け入れ先の会社はJLPTに無関心になった。
それにはこんな背景がある。
三笠塾で学ぶ実習生の中から、しっかり就労規則を読んだり、給与規定や残業について質問してくるものが出てきた。
「こういうことは会社のことだから、私に聞いてもわからない。会社に聞いてごらん」
というと、会社に聞いても満足のいく答えが得られないという。
彼らはもはや以前のようにおとなしく素直に働くだけの実習生ではない。
彼らが就労に関する質問や要求をするようになったのは、情報手段の発達に伴って情報量も格段に増大していることがある。フェースブックやラインを介して、あっという間に情報が拡散していくのである。外国人労働者の就労問題など、社会的問題についても彼らの関心を引くようになったことだろう。さらに、彼らが日本語に上達するにつれ、雇い主側に直接要求できるようになったのだ。
実習生にとっては日本で働けなくなることが一番困ることだ。例えば会社がなくなったら給与を払ってもらえなくなるし、さまざまな制約があって急に他の職場には移動できないので、結局帰国するしかなくなるのだ。日本へ稼ぎに来た彼らにとっては、それは絶対に困ることだ。反対に職場の待遇などで我慢できなくなったら、何のこだわりもなく彼らはさっさと会社を辞めてしまうだろう。それは雇用側にとってもいいことではない。
せめてJLPTで良い結果をだした実習生は雇用側も評価してほしい。とうのは、彼らを1回限りの使い捨てではなく、一人の人間として彼らの努力を受け入れてもらいたいからだ。
続々と入ってくるJLPTの結果発表、だがJLPT-N1は今のところ総崩れだった。私はN1の授業を担当しているがやり方を間違えたような気がする。反省することしきりだ。
いろいろな思いが交錯する。私自身はJLPTによって勉強させられることばかりだ。私はJLPTの力を信じている。合否の結果を聞くことは、生徒の未来を考えることと同じ。
さて、またこの瞬間にも合格のうれしい知らせがきた。よかったね! おめでとう、芽が出ますように。
講師の一人がこんなことを言っていた。
「試験の結果? 合格! これって奇跡なんですよ。奇跡はめったにないけど。そうです、奇跡は実現するから奇跡なんです」
今日は奇跡がいっぱい積みあがった、私には最高の日だ!