Mさんのこと

三笠塾塾生はおしなべておしゃべりだ。ベトナム人がおしゃべりなのかもしれない。そんな中でMさんは、とても静かな印象の女子学生だった。だったというのは、彼女が2月28日にベトナムに帰国してしまったからだ。昨年8月に半年間の交換留学生としてMさんは、日本にやってきた。四谷にある有名大学の短期留学生だ。三笠塾には偽学生はたくさんいるが、Mさんのような純粋に留学生とよべる学生は案外少ない。そのためかMさんは講師の評判もすこぶるよかった。よく勉強します。周囲に感謝の気持ちを忘れない。謙虚。驕りがない。

Mさんにしてみれば、たった半年の留学期間。1日1日が宝石のように大切な時間であったらしい。どの学生とも仲良く、どんなことにも積極的に、でも決して無理をしない。

三笠塾の学生は教え教えられる環境では、どの子も平等だし、遠慮もしない。でもはっきりと二極化している。積極的な子と消極的な子。積極的な子はどこまでも積極的。押しも強く要求も多い。反対に消極的な子は、いるのかいないのかわからない。それでも一緒に勉強する姿は変わらずたくましい。Mさんは二極化の中央にいる。あまり自分を主張しないが、どんなところにも必ずカオを出し積極的。そして極めつけはスピーチコンテストだった。8月に入塾して、9月にはエントリー、コツコツ自分の体験を書き込んで、見事入賞。テーマは日本人の入浴習慣のことだった。つまり“裸”。シャイなMさんにしては結構勇気のあるテーマだと思う。

そんなMさんが2月最後の日曜日を持ってお別れとなった。お別れ会の日、Mさんは、三笠塾にこられて本当に幸せだったといってくれた。ぽろぽろ涙を流して別れを惜しんだ。宝石のような時間。それを束の間、Mさんに差し出すことができたのなら、三笠塾も冥利につきるというもの。

ある人のすすめもあって、そして、Mさんのことを思って、これから少しずつ塾生のことも綴ってみたいと思っている。

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